予備校の思い出

「この方法で漢文は満点以外取れなくなります」・・これは、浪人時代に通っていた予備校の漢文の先生が、最初の講義で放った言葉です。その時もかなりびっくりしましたが、もっとびっくりしたのは、この先生の授業で本当にそうなってしまった経験があるということです。

ついこの間、浪人時代の友達と大学入学以来に会う機会があって、当時のこと、今のこと、色々と話してきました。で、予備校時代の話をしていて、何が一番思い出に残ってるかという話題になった時、僕も彼も「I先生の授業」で一致しました。
I先生が担当されてたのは漢文の授業でしたが、その授業スタイルたるや、知らない人が聞けば呆然モノで、90分の授業のうち授業の内容は10〜20分程度、残りの時間はI先生が話しているのです。この話は時には休み時間にまで食い込んでしまうけれど、誰からもブーイングはなく、しかも講義室は受講登録してない人も含めて満員御礼で、立ち見がでる程でした。話の内容は具体的にはかけませんが、先生の人生論みたいなもので、だけど不思議に鼻にかかる事もなく惹かれる話ばかり。小柄で少しお年を召されてましたが、情熱的に話をされる姿が、お世辞じゃなく凄く格好いい人でした。
なんというか、この先生の人柄に、みんなが惹かれて集まってきているような気さえしました。でも、ここは単なる先生の講演会だという訳じゃなかったのです。講演じゃなくて、講義。そしてその内容は、先の通りとても短いんです。でも、この短さは先生が教えてくれる勉強法に乗っ取っているからで、正直そんなのでどうにかなるのか、講義を受けていない友人に聞かれた事はありましたが、結論から言ってしまえば1が10になる信じられない勉強法だったのでした。基本は、とにかく声に出して読むことで覚える、とのことで、短い授業中、先生の読みに合わせて全員がこれを復唱するという・・なんか、どこぞの怪しいセミナーかと勘違いされそうでしたが、毎回、その教えに従い全員がこれを繰り返してました。
楽して点が取れるわけがない・・事実、他の科目はそんな感じでした。でも、漢文だけは別で、授業中に復唱した内容はばっちり頭に染み込んでました。恥ずかしながらそれまでセンター試験での漢文の得点は10/50程度でしたが、この方法での結果、なんと45/50が当たり前になったのです。初めて45点を取った時は、なんでこんなに簡単なんだろうかと、思わず身震いしてしまった程です。センターでは無事50点を頂いて、大きな助けとなってもらいました。
先生は今でも現役だそうで、きっと今でも同じ方法で、漢文を教えているんじゃないかと思います。何だかそのことが、妙に嬉しく思ったりして。この体験も貴重だったけど、あの先生と会った事や話を聞いたことが、今でも凄く貴重な体験として残っています。今でもこっそり受けに行きたいなと(笑)